「In Focus 12」無事終了しました。

こんにちは。 

今回は9月4日(土)〜10月10日(日)に開催した「In Focus12 −卒業生の現在」についてお話しさせていただきます。展覧会終了後の更新となりお心苦しいですが、、。ご鑑賞いただいた方も、未鑑賞の方も楽しんでいただけますと幸いです。


In Focusは尾道市立大学を卒業・修了後、創作活動を継続している若手作家を紹介する企画で、2010年より回を重ね、今年で12回目を迎えます。

日本画からは木村 遥(きむら はるか)さん、油画からは柴田 七美(しばた なみ)さん、デザインからは青井 典子(あおい のりこ)さんが出展してくださいました。


緊急事態宣言下に展示準備を行ったため、写真を撮影し作家さんに確認していただき指示をもらう方法で進めていきました。最後のライティングの調整も同様の方法で確認していただきつつ展示させていただきました。

写真はライティングチェックの際に使用したものの一部ですが、第2、3展示室はスポットライトの光だけで照らすとなりました。照明が違うだけで会場の雰囲気はもちろん作品の見え方や色(発色度合いでしょうか)が変わります。



        ▲ ダウンライト + スポットライト 

                      
        ▲ スポットライトのみ


第1展示室は2、3展示室とは逆に ダウンライト + スポットライト、さらに展示室にある大きな窓のカーテンを全開にし、大陽光も射すような明るい展示室となりました。



それぞれの作品が映える空間になりました。

では、各展示室ごとについて少しお話しさせていただきます。

第1展示室はデザインの青井典子さんの作品を展示しました。





壁に並ぶポスター群は、絵や文字の使い方に同じ物がないほどバリエーションが豊富です。その引き出しの多さに青井さんの高い技術力が伺えます。

当大学の広報物も数多く手がけていらっしゃる為、私自身大学で見かけた物もあり「青井さんが作っていたんだ!」という驚きもありました。他にも尾道の街で見かけた広報物も多く、生活する中で気が付かないうちに新しいお仕事を見ていたのだと実感しました。





また、趣味で制作されているコスプレの武器やマスクは、独学で得た知識とこだわりによってゲームや漫画から飛び出してきたかのような本物らしさがあります。作品によって使われている素材や塗料が違い、見応えがありました。多彩な姿を見ることができて充実感のある空間でした。





赤い心臓の作品は私が知っている漫画で、登場する敵キャラクターはそれぞれ変わったマスクを着けています。作中、マスク作りの最後に花をくれると出来がいい証、ということでお花を挿している描写がありますが、青井さんの制作した作品は近くで見ても細部まで作り込まれており、お花を挿したい気持ちになりました。





また、今回展示した画像の本4冊は全てAmazonなどで購入可能とのことです。
「尾道の本Ver.2」「季刊まっすぐ 石川達也」「おのみち怪談、おのみち怪談2」ご興味があれば是非、実物で青井さんのお仕事をご覧ください。

第2展示室は日本画の木村遥さん、油画の柴田さんの作品を展示しました。

入ってすぐは木村さんの大きな作品が目に留まります。





野球球場での試合や宇宙飛行士など、モチーフ選択や切り取り方が非常に興味深い作品群です。日本画、絵画全体、どちらの視点から見ても珍しい、木村さんにしかできない作品です。「切り取る風景」という作品も形や展示方法も含め、世間一般の「日本画」のイメージがある方から見ると新鮮に映るのではないでしょうか。




一瞬の出来事を切り取ったような、物語が感じられる絵は「風景を軸として」描くことを前提として、自身の馴染みの場所や特別な思いを感じたシーンを切り取り描いているそうです。



モチーフ選択の面白さはもちろん、カラッとした質感の描写や、人工光でふわっと照らされた風景が印象的です。スプレーで吹きかけたような独特な印象の画面の下からのぞく金箔もきいています。


人工物が多く無機的なモチーフと、その描写方法がしっくりマッチしていて魅力的です。人物も風景の一部として捉えているからかもしれませんが、人物がいる画面も軽快な印象を受けます。





就職され、車移動で行動範囲が広がったことで新しい景色に触れる機会が増えたそうです。今後の作品も楽しみですね。木村さんは「日本美術院」という公募団体に所属していますので、広島近辺の院展の巡回展で実際に新作をご覧いただける機会があると思います。

柴田さんの作品は、動く展示可能な壁で空間を分け、第2展示室から第3展示室にかけて展示しました。

 




まず目を引くのがF100号を2つ繋げた作品で、1620×1303mm×2つなので、3240×2606mmの大型作品です。黄色と黒で構成された画面が印象的です。柴田さんの作品は全体に言えることですが、限られた色数で構成された画面と、絵肌や筆のタッチから感じる独特の物質感、存在感が魅力的に思います。








作品を拝見した当初、グッと力を込めて、書道のように一発で決めた筆運びの印象を受けましたが、実は絵具がたっぷり使われているだけで、かなりソフトタッチの優しい筆運びで描いているそうです。基本的に画面が乾かないうちなら何度でも修正OKとして、乾燥して固まる前に一気に仕上げるそうです。






今回はzoomを利用しアーティストトークを行いました。柴田さんのトークでは、油画教授のO先生、職員(私)でお話しを伺ったのですが、乾く前に一気に仕上げる話からどんなオイルを使用しているのかという話題になりました。使用しているのは「ポピーオイル」という比較的乾燥自体は遅いオイルだそうですが、鉛が入っているようなシルバーホワイトや、ローアンバーのような乾燥の速い絵具を使うことが多く結局乾燥時間は稼げない。とのことでした。(酸化重合という化学反応で乾燥していくそうです)技術的なお話しは、私が日本画専攻だったため非常に興味深かったです。








こちらはケント紙に鉛筆で描かれた作品ですが、一番画像と実物のギャップが大きかった作品です。よくよく見ると鉛筆で塗り込まれた無数の線が見えます。光の反射する方向に動くと黒い部分の見え方が異なります。素材としてはケント紙、鉛筆と絵を描く人以外にも身近なものですが、このような方法で描くことで物質感が変化しているようです。


また、柴田さん自身の原体験の影響もあるかもしれませんが、戦争関係や植民地政策に関心がある事を方々にお話ししていたところ、ドキュメンタリー映画制作のお手伝いとして参加する機会があったそうです。タイトルは「塩月桃甫」(しおつきとうほ)。

監督さんは宮崎出身で、塩月氏も宮崎出身とのこと。宮崎にたまたま現存していた作品を監督さんが骨董屋さんで見つけて存在を知り、そこから塩月桃甫を掘り下げてみる事となったそうです。ご興味があれば是非チェックしてみてください。(https://shiotsukitoho.com) 




【終了】

「In Focus 12 −卒業生の現在−」  

2021年 9月4日(土)〜 10月10日(日)

会場   MOU尾道市立大学美術館
開館時間 10:00 - 18:00
休館日  水・木曜日(祝日開館) 

入館無料


本学を卒業・修了し、各分野で活躍している新進作家、木村遥(日本画)・柴田七美(油画)・青井典子(グラフィックデザイナー)の3名を紹介。

・アーティストトーク
当館YouTubeにて動画公開予定です。
公開しましたら、こちらのブログなどで追ってお知らせさせていただきます。

…………………………………………………………………………

【開催中】

「鈴木恵麻展」  

2021年10月30日(土)〜 12月12日(日)

会場   MOU尾道市立大学美術館
開館時間 10:00 - 18:00
休館日  水・木曜日(祝日開館) 

入館無料


本学美術学科日本画コース教員・鈴木恵麻による個展です。日本美術院 院展出品作品を中心に今まで制作してきた作品と、日々の制作テーマを盛り込んだ新作を交えた展覧会。

■ 会期中イベント
アーティスト・トーク(日程変更いたします

日時:11月6日(土)/17:00〜
   12月4日(土)/17:00〜
定員:15名(要予約制)/TEL▶0848-20-7831
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で展覧会開催・イベント等の日程を変更する可能性がございます。
※イベント開催時に録画し、YouTubeにて動画を公開予定です。ご了承ください。



0 件のコメント:

コメントを投稿