「塩川先生は、『絵に語らせたらいいんだから、いろいろと言葉にする必要はない。みる人が絵と対峙して絵と語り合ってもらったらいいんだ』と仰いそうですが、自分たちの解説に加えて、参加された皆さまからもエピソードやお話を集めながら進めさせてほしい。」という挨拶に始まり、本学油画コース教員の、矢野哲也・小野環・橋野仁史が皆さまと一緒に展示室を回りながら、塩川髙敏先生の創作の軌跡をたどりました。
「尾道に来る前の作品も展示して、尾道の皆さまや学生たちに自分の初期作品から一堂にみてほしい」という生前の想いを汲んで、一番古い作品は小学生の時に描かれた油絵まで遡り、1970年代〜90年代の横浜で制作をされていた頃の作品、そして本学設置準備のために尾道に来られてからの2000年代以降の作品を展示しています。
高校生の時に「絵を描くことが面白くて辞められない」と画家になることを志し、現役で東京藝術大学へ進んだ後は周囲からのプレッシャーもあり、とにかく描かなくてはと石膏デッサンを多く描いて確かな基礎を積み上げたそうです。
初期の作品にみられる幾何学的な形は、同時代に流行したドイツやオーストリア系の画家の影響を受けたと考えられます。一方では仏像のポストカード等の資料も大切に保管されており、惹かれるものを幅広く大切にして、自分のものにしようとしていたことが、うかがえます。
後ろに見えるのが、高校生の時に描いた画家を志すきっかけとなった作品
ご結婚とお子さんの誕生も、制作に影響をしたそうです。庭の樹や松葉、幼稚園までの道のりが描かれている作品からは、より身近な環境と存在に目を向けられていたことが分かります。仕事を全て辞め、数年は絵だけを描くのだと決意された時期は、植物園に通うなどして多くのデッサンを描かれたそうです。このデッサンを塩川先生は大切にされていたそうで、その中の一部も展示しています。
貴重なデッサンやドローイングも多く展示しています
長年、『浮游』をテーマに描かれていた先生の作品を並べてみると、同じ『浮游』シリーズでも光についての過渡期がみられ、無機的な蛍光灯の室内のような光から、太陽の柔らかく包み込むような光へと変わっているのが分かります。
2017年の作品を描かれていた時には「自由に描けるようになって、楽しくなってきた」とお話されていたそうです。
会期は12月9日まで、尾道市立大学サテライトスタジオ(尾道市土堂1-8-5/商店街の中にあります)でも同時開催しております。
また、なかた美術館(尾道市潮見町6-11/http://www.nakata-museum.jp)では「塩川髙敏―尾道を描く―」を「コレクションプラス 描かれた人々」と同時開催されています。こちらは休館日や開館時間等異なりますが、ぜひ全会場を巡っていただけると幸いです。
皆さまのご来館、お待ちしております。
<現在開催中>
「浮游 −塩川髙敏展−」
2018年 10月20日(土)〜 12月9日(日)
会場 MOU尾道市立大学美術館・尾道市立大学サテライトスタジオ
開館時間 10:00 - 18:00
休館日 水・木曜日
入場無料
尾道市立大学の設置準備の時以来、大学の教育研究の充実に尽力し、2017年秋に急逝した画家の創作の軌跡を振り返る企画展。初期作品から代表的なシリーズ「樹映」や「浮游」をはじめ、尾道の風景など、制作の変遷を辿りながら画家の創作の核心に迫る企画です。
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