アーティストトークを開催しました!

現在展示中の稲川豊個展「符と思う|eASY mECHANISM」のアーティストトークを開催初日に行いました。

モデレーターに広島市現代美術館キュレーターの角奈緒子さんをお招きし、稲川先生と対談形式でトークしていただきました。今回は撮影しなかったため、その時の様子をブログにてお伝えいたします!



トークするお二人も含め来館者全員が床に座り、リラックスした雰囲気のなか1時間半のトークが始まりました。

角さんによる司会のもと、あらかじめ用意されたトークテーマなどは無く、お二人で今回の展示内容、稲川先生の作品や作者自身についてのお話をしてくださいました。



角さんは以前から親交のある稲川先生の今回の展示に関して、いつもより整理された印象を受けたといいます。展示室をまたいで似通った要素があったり、会場全体の作品同士のつながりが感じられたとのことでした。

また、稲川作品について、色々な要素(絵画・映像・立体)が作品単体としてもあり、複合的にレイヤーのように重なって全体が一つの作品としても表現されていて、作品そのものと会場全体のスケール感を行き来して鑑賞し、鑑賞者を無限ループに陥れるような感覚があるといったようなお話がありました。

これに対し稲川先生は、作家自身の頭の中も常に思考がぐるぐるとループしていて、それを一つの作品に落とし込もうとすると違和感が生じる。そのため、近年はキャンパス1枚のなかで1から完成まで向かう直線的な制作ではなく、立体や映像など色々な形式・要素の作品を点在的に制作することで、自身の頭の中にあるイメージに近づけているとおっしゃっていました。






稲川作品には制作における要素のなかに「言葉・言語」もあります。英語と日本語が入り混じった、意味の通っているようで通っていないような詩的な文章が印象的です。これらの制作方法について、英文を日本語に翻訳する際に、翻訳ツールなどを使って直訳された場合、おかしな文章ができあがるのを、さらに日本語から英語に翻訳して・・・といった行為を繰り返して制作しているとのことでした。言語や文化の壁(あちら側とこちら側)を行き来することで生まれた文章には、ある種のパラレルワールドのようなものが感じ取れます。




この直訳すると違和感が生じる感覚は、稲川先生のこれまでの絵画制作で、デジタルから絵画に描きおこす際にも、似たような感覚があったというお話もされていました。直訳しておかしな文章にならないように本質的な意味を示すには、意訳する必要があるように、制作表現においても絵画だけでなく様々な要素を通して表現することで、より本質的な部分を体現するのが現在の制作スタイルに繋がっているようです。

この絵画表現における意訳という話を聞いて、稲川先生の制作に対しての理解がより深まったように思います。過去の平面作品をトリミングしたり加筆したりしている作品も、表現したいことの本質に近づけるための再制作だったのだと納得しました。




あっという間に時間が過ぎ、質疑応答もいくつか交え1時間半のギャラリートークが終了しました。作家のみで作品を解説するのではなく、司会と対話する形でトークいただけたことで、鑑賞者として気になる点や掘り下げて聞きたいところを知ることができ、非常に充実した内容になりました。お話いただいた稲川先生、角さん、ご来館いただいた皆さまも誠にありがとうございました。

稲川豊個展「符と思う|eASY mECHANISM」は12月25日(日)まで開催中です。まだご来館してない方も、既に展示を見られた方も、ギャラリートークの内容を踏まえて展示をご鑑賞いただけたら嬉しいです。




【現在開催中】

符と思う|eASY mECHANISM  

2022年11月12日(土)〜 12月25日(日)
会場   MOU尾道市立大学美術館
開館時間 10:00 - 18:00
休館日  水・木曜日(祝日開館)

入館無料

本学美術学科油画コース教員・稲川豊による個展です。



【次回】

「美術学科油画コース3年次 進級制作展」  


2023年 1月14日(土)〜 1月29日(日)

会場   MOU尾道市立大学美術館
開館時間 10:00 - 18:00
休館日  水・木曜日

入場無料

本学油画コース学部3年生による進級制作展です。これまで学内発表のみでしたが、今回実験的な試みとして美術館で制作発表します。

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