「感覚のかたち」ギャラリートークを開催しました −後編−


前回に引き続き「感覚のかたち」ギャラリートーク −後編− を紹介していきたいと思います。
今回ご紹介するのは「黒田先生」「世永先生」「林先生」です。


5人目は映像領域の黒田先生。

黒田先生は映像には実体がないと考えているそうです。何かに映し出された光の集合体を見る側は頭の中で認識し、その頭の中で生まれたイメージが実体のない映像の「かたち」として現れるのではないかと思索しました。
《輝き −the Shine》は、岡山県倉敷市の松島で滞在制作した作品だそうです。黒田先生は宮崎県出身で、地元の海をよく見ていたこともあり、これまでも海をテーマに作品を作っていました。しかし尾道に来てから、地元の海の荒々しい感じと瀬戸内海の穏やかな水面の違いを感じたそうです。その穏やかな水面に光が反射してキラキラと輝いている、目の奥に光が届くような感覚を、光の輝きだけ取り出して作った作品だということです。質問で「上映時間はどうやって決めているのか?」という問いに対して、「最終的な長さは自分の感覚・直感で決める。どんな画面の大きさかでも尺は変わる。」とのことでした。今回とは違うサイズではどのように変わるのかも気になります。













6人目はグラフィックデザイン領域の世永先生。
制作アプローチが大きく分けて二通りあるということで、簡単にいうと作家としてか、依頼者のいるお仕事としてかだそうです。《Swimming Pool》は作家に近い形で、お絵かきのように好きに制作したとのことです。また、この作品はコンポジションでシンプルな形(丸、直線など)に構成したそうです。質問として「色、形、配色の満足したと思うときは?」という問いに対して、「時間をおいてみながら修正したり、戻したりする。2、3時間粘ってしっくりきたなと感じたとき。クライアントがいる場合は相手が頷いたとき。自分が満足していなかったら提案する。」とのことでした。
そして、実は本展覧会のチラシデザイン、世永先生と前回ギャラリートーク前編で紹介した伊藤先生がコラボレーションした作品となります。ここでのチラシデザインはお仕事に近いアプローチだったそうです。チラシの丸、三角、四角は7人の先生に描いてもらったものを集めて組み合わせているとのことですが、どれがどの先生の図形でしょうか。気になりますね。












最後の7人目は特別参加の林先生。
林先生は来年度から尾道市立大学のデザインコース教員として着任されます。今回は紹介も兼ねて特別参加として作品を出品しています。《乾漆朱塗酒器》、《乾漆朱塗盃》、《栗寄木造折敷》はセットの作品ですが、この作品は自分の世界で一人晩酌するための理想のセットだそうです。家では子供もいるため1人の時間が持てませんが、《栗寄木造折敷》はそんな中、自分だけの世界で酔える結界のような役割で制作したということです。《栗造二段重箱》は重箱といえばおせちということで、朱、黒のおめでたい色合いに、カジュアルで日常使いできるようなものとして制作したそうです。質問で「漆の食器は扱いにくいイメージ。日常使いするためにコツはある?」という問いに対して、「ぬるま湯、洗剤は大丈夫。5、6年でツヤが出てくるので、いい使い手さんが使用してくれると漆がもっと魅力的になる。」とのことでした。食器など使うことで完成する作品ということは、誰が使うかでも作品の見え方は変化しそうですね。















7人それぞれの教員から、いつもは聞けないような話や制作過程について知る貴重な機会となりました。
ギャラリートークを通して作者の「感覚」について、また出品作品は何に注目し、それをどのように「かたち」にしたのか聞いた前と後では変化がありました。聞く前は今までの経験や知識など自分の軸だけで鑑賞していましたが、聞いた後は作品説明だけでは分からなかった作者の軸、デザインを仕事にする方共通の話の中でのそれぞれの違い、ギャラリートークで出た自分とは異なる感覚からの質問など、新たな視点を持つことができました。鑑賞する際に様々な視点を持ち比較して鑑賞することで、よりはっきりと本展覧会の出品者それぞれの感覚のかたち」を感じることができたような気がします。

「感覚のかたち ー尾道市立大学美術学科デザインコース教員展ー 」は10月22日(火・祝)まで開催しております。やっと秋らしく肌寒くなってきましたが、秋といえば〇〇の秋という言葉が沢山ありますね。ぜひ芸術の秋ということで、美術館巡りはいかがでしょうか。その際は、気軽に当館にもいらしてくださいね。










「感覚のかたち 
   ー尾道市立大学美術学科デザインコース教員展ー」  
2019年 9月14日(土)〜 10月22日(火・祝)
開館時間 10:00〜18:00
入館無料
休館日 水・木曜日

本学美術学科デザインコース教員が共通テーマ「感覚のかたち」をもとに制作した作品を通して、デザインの持つさまざまな「視点(まなざし)」を総合的に紹介する展覧会です。










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