次回展「In Focus 10 −卒業生の現在−」のお知らせ

「感覚のかたち−尾道市立大学デザインコース教員展−」にご来館くださった皆様、
どうもありがとうございました。

次回展覧会は11月2日(土)より、「In Focus 10—卒業生の現在—」を開催いたします。
本学を卒業・修了後も、各分野で活躍している新進作家、池上望月(日本画)・高松明日香(デザイン)・外薗千里(油画)を紹介します。10回目となる今回は、「連想する絵画」をキーワードに作家を選出しました。表現は三者三様ですが、複数のイメージからなる絵画は見るものを作品の前に立ち止まらせ、連想へと誘います。ぜひ会場でご覧ください。

初日の11月2日(土)14時より、出品作家3名によるアーティストトークを開催します。作家自身の言葉により、作品や活動について語られる貴重な機会です。ぜひお誘い合わせの上、ご参加ください。





また、今回のチラシデザインも、本学の卒業生に制作を依頼しました。「連想」の浮かんでは消えるイメージが、いくつもの四角い模様で表現されています。今回は金色インクを使用した特別な仕様になっていますので、ぜひお手にとっていただけたら幸いです。



「In Focus 10  ー卒業生の現在ー」  
2019年 11月2日(土)〜 12月8日(日)
開館時間 10:00〜18:00
入館無料
休館日 水・木曜日

【会期中イベント】
◎アーティストトーク
2019年11月2日(土)14:00〜15:30 参加無料
3名の作家が自身の作品や活動について語ります。
◎ギャラリートーク
2019年11月9日(土)・24日(日)・12月8日(日)
それぞれ14:00〜15:00 参加無料
学芸員が展覧会や作品について解説します。









「感覚のかたち」ギャラリートークを開催しました −後編−


前回に引き続き「感覚のかたち」ギャラリートーク −後編− を紹介していきたいと思います。
今回ご紹介するのは「黒田先生」「世永先生」「林先生」です。


5人目は映像領域の黒田先生。

黒田先生は映像には実体がないと考えているそうです。何かに映し出された光の集合体を見る側は頭の中で認識し、その頭の中で生まれたイメージが実体のない映像の「かたち」として現れるのではないかと思索しました。
《輝き −the Shine》は、岡山県倉敷市の松島で滞在制作した作品だそうです。黒田先生は宮崎県出身で、地元の海をよく見ていたこともあり、これまでも海をテーマに作品を作っていました。しかし尾道に来てから、地元の海の荒々しい感じと瀬戸内海の穏やかな水面の違いを感じたそうです。その穏やかな水面に光が反射してキラキラと輝いている、目の奥に光が届くような感覚を、光の輝きだけ取り出して作った作品だということです。質問で「上映時間はどうやって決めているのか?」という問いに対して、「最終的な長さは自分の感覚・直感で決める。どんな画面の大きさかでも尺は変わる。」とのことでした。今回とは違うサイズではどのように変わるのかも気になります。













6人目はグラフィックデザイン領域の世永先生。
制作アプローチが大きく分けて二通りあるということで、簡単にいうと作家としてか、依頼者のいるお仕事としてかだそうです。《Swimming Pool》は作家に近い形で、お絵かきのように好きに制作したとのことです。また、この作品はコンポジションでシンプルな形(丸、直線など)に構成したそうです。質問として「色、形、配色の満足したと思うときは?」という問いに対して、「時間をおいてみながら修正したり、戻したりする。2、3時間粘ってしっくりきたなと感じたとき。クライアントがいる場合は相手が頷いたとき。自分が満足していなかったら提案する。」とのことでした。
そして、実は本展覧会のチラシデザイン、世永先生と前回ギャラリートーク前編で紹介した伊藤先生がコラボレーションした作品となります。ここでのチラシデザインはお仕事に近いアプローチだったそうです。チラシの丸、三角、四角は7人の先生に描いてもらったものを集めて組み合わせているとのことですが、どれがどの先生の図形でしょうか。気になりますね。












最後の7人目は特別参加の林先生。
林先生は来年度から尾道市立大学のデザインコース教員として着任されます。今回は紹介も兼ねて特別参加として作品を出品しています。《乾漆朱塗酒器》、《乾漆朱塗盃》、《栗寄木造折敷》はセットの作品ですが、この作品は自分の世界で一人晩酌するための理想のセットだそうです。家では子供もいるため1人の時間が持てませんが、《栗寄木造折敷》はそんな中、自分だけの世界で酔える結界のような役割で制作したということです。《栗造二段重箱》は重箱といえばおせちということで、朱、黒のおめでたい色合いに、カジュアルで日常使いできるようなものとして制作したそうです。質問で「漆の食器は扱いにくいイメージ。日常使いするためにコツはある?」という問いに対して、「ぬるま湯、洗剤は大丈夫。5、6年でツヤが出てくるので、いい使い手さんが使用してくれると漆がもっと魅力的になる。」とのことでした。食器など使うことで完成する作品ということは、誰が使うかでも作品の見え方は変化しそうですね。















7人それぞれの教員から、いつもは聞けないような話や制作過程について知る貴重な機会となりました。
ギャラリートークを通して作者の「感覚」について、また出品作品は何に注目し、それをどのように「かたち」にしたのか聞いた前と後では変化がありました。聞く前は今までの経験や知識など自分の軸だけで鑑賞していましたが、聞いた後は作品説明だけでは分からなかった作者の軸、デザインを仕事にする方共通の話の中でのそれぞれの違い、ギャラリートークで出た自分とは異なる感覚からの質問など、新たな視点を持つことができました。鑑賞する際に様々な視点を持ち比較して鑑賞することで、よりはっきりと本展覧会の出品者それぞれの感覚のかたち」を感じることができたような気がします。

「感覚のかたち ー尾道市立大学美術学科デザインコース教員展ー 」は10月22日(火・祝)まで開催しております。やっと秋らしく肌寒くなってきましたが、秋といえば〇〇の秋という言葉が沢山ありますね。ぜひ芸術の秋ということで、美術館巡りはいかがでしょうか。その際は、気軽に当館にもいらしてくださいね。










「感覚のかたち 
   ー尾道市立大学美術学科デザインコース教員展ー」  
2019年 9月14日(土)〜 10月22日(火・祝)
開館時間 10:00〜18:00
入館無料
休館日 水・木曜日

本学美術学科デザインコース教員が共通テーマ「感覚のかたち」をもとに制作した作品を通して、デザインの持つさまざまな「視点(まなざし)」を総合的に紹介する展覧会です。










「感覚のかたち」ギャラリートークを開催しました −前編−

「感覚のかたち」ギャラリートークを10月5日(土)14時より開催いたしました。
の展覧会はデザインコース教員の企画展になっており、代表して野崎先生から「感覚のかたち」という展覧会タイトルについて説明してもらいました。









今回は出品者皆さんのギャラリートークについての記事ですので、長くなってしまいました。そのため前編、後編に分けてご紹介していこうと思います。
今回紹介するのは「野崎先生」「大野先生」「伊藤先生」「桜田先生」です。






まず1人目はイラストレーション領域の野崎先生から。

《CARNAVAL》についてのお話で、作品名はカルナバルと読みます。作品を見ることで、見る人それぞれの記憶を連想できるタイムマシンのような装置として制作したそうです。質問で、「作品のテイストに昭和っぽさともまた違う異国感があるが、繋がる昔の記憶はある?」という問いに対して、「これが全てとは言わないがアニメーションをよく見ていて、ディズニーとかのアニメーションが爆発的に出てきた時代だったのでそれかな?」とのことでした。《CARNAVAL》制作時に「メリーゴーランドワルツ」がヘビーローテーションで流れていたと聞きましたが、その時曲が浮かびませんでした…。後で気になって調べてみたところ、「メリーゴーランドワルツ」でヒットするものがなく、なんとか思いつくのでサティのジュ・トゥ・ヴーではないかと思ったのですが正解できていますか?















2人目はデザインコース助手の大野先生。
大野先生は尾道大学在学中、油絵を専攻していました。助手をされる方はそのコースの出身が多いため、かなり特殊なパターンだと思います。「感覚のかたち」というテーマが決まってから、もともと写真加工したものを写実的に描写していたため、感覚的な制作ではないと感じていたようです。しかし、大野先生は絵画を制作する前の写真加工の時点で感覚的であり、これまで鉛筆で描いたデッサン作品は手の感覚でかたちを作るという感覚としてあったと考えました。そしてその手の感覚でかたちを作る感覚を育てたい、進化させたいというところから作品作りが始まったそうです。そこからどのようにして《サーフェス諸島》に繋がっていったのかは、リチャード・ドーキンス『進化の存在証明』垂水雄二訳,早川書房.を読んでみると面白いかもしれません。











3人目はアドバタイジング領域の伊藤先生。
ちなみにアドバタイジングは主に広告デザインのことを指します。伊藤先生は「暮らしをユニークに、そして軽やかに彩る」というコンセプトのもと制作しており、今回は幼少期からずっと引っかかっていた宮沢賢治のオノマトペから着想を得て制作したのが《kikku ton》シリーズだそうです。引き続きこのシリーズを展開していきたいということで、「モチーフに鳥、魚、数字などあるが、今後モチーフ展開があれば教えて欲しい」という質問がありました。これに対して、「今回の数字は異質だが、いつも身近な動植物をモチーフにすることが多く、生活の邪魔にならないものを選ぶ。しかし、虫みたいにリアルにすると嫌悪感を感じる人の多いモチーフも、グラフィックにすると意外と見られたりする。」と答えていました。もしかして次回作は虫…とても楽しみですね。












4人目は立体造形領域の桜田先生。
今回は金工の作品と、3Dプリンターで制作した作品を展示しています。自分の得意な方法である金属で、実際の景色や日常で感じた感覚、目に見えないものをかたちにして表現した作品。そして3Dプリンターで制作した24個の作品。実は3Dプリンターの作品、本展覧会では24個展示していますが、桜田先生の頭の中では60個もあったそうです。3Dプリンターはデジタルデータを入力して形が出来ますが、冷たいイメージがあります。先生は作品に温かさを感じるものが好ましいと考えており、台座を木にしたり、フリーハンドで下書きを取り込んでその上から造形してみたりと様々な工夫をされていました。また、散歩や自然散策中に見つけた好きな風景やひび割れなど、作品にするために溜めているそうです。今回の金工の作品は特に尾道近郊に住んでいる方なら見たこと、経験したことがあるテーマが多いと思います。桜田先生の感覚で作られた作品と、自分の感覚とを照らし合わせてみながら鑑賞してみても面白いかもしれません。













次回の「感覚のかたち」ギャラリートーク −後編− は「黒田先生」「世永先生」「林先生」を紹介していきます。お楽しみに。












「感覚のかたち 
   ー尾道市立大学美術学科デザインコース教員展ー」  
2019年 9月14日(土)〜 10月22日(火・祝)
開館時間 10:00〜18:00
入館無料
休館日 水・木曜日

本学美術学科デザインコース教員が共通テーマ「感覚のかたち」をもとに制作した作品を通して、デザインの持つさまざまな「視点(まなざし)」を総合的に紹介する展覧会です。